今回は「産業機械製造業」での特定技能外国人の受け入れ方法や費用についてまとめました。
在留資格「特定技能」は、深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく制度です。
製造業分野では「素形材産業」「産業機械製造業」「電気電子情報関連業」の3つに分かれています。
自社がどの分野に当てはまるか見比べてみてください。
素形材産業で「特定技能」外国人を雇用する方法
電気・電子情報関連業で「特定技能」外国人を雇用する方法
これまでの製造業
経済産業省が2017年に行った調査によると、大企業、中小企業の90%以上が人手不足を課題としていることがわかります。
特に「輸送用機械」、「鉄鋼業」、「非鉄金属」、「金属製品」の業種では「ビジネスにも影響が出ている」と回答している企業が多いです。
特に工場で働く技能人材が突出して不足しています。
大企業よりも中小企業の方がより技能人材の確保に苦労している現状です。
次に人材確保対策に向けた取り組みについてみていきます。
もっとも重要視されている項目は「新卒採用の強化(28.7%)」です。
大企業では、「人材育成方法の見直し・充実化の取組」が多かったり、中小企業では、「社内のシニア・ベテラン人材の継続確保」、「社外のシニア・ベテラン人材の採用強化」を重視している特徴があります。
その他にも人手不足を解消するためにAIやIoT等を活用したり、ロボットの導入による自動化・省人化に取り組む企業も増えてくるでしょう。
もちろん技能実習生を中心とした外国人材も多く活躍してしています。
特定技能では、技能実習を終えた外国人が資格を変更して働くことができたり、試験を合格することで特定技能外国人として働くことが可能となります。
次に特定技能にはどのような特徴があるのかまとめていきます。
製造3分野の特徴
製造業では、「素形材産業」、「産業機械製造業」、「電気・電子情報関連産業」の3つの分野に分かれています。
特定技能外国人を受け入れる前に自社がどの産業分野に該当しているか判断しなければいけません。
日本標準産業分類(平成25年10月改定)(総務省)
該当性の判断基準
該当性の判断基準として、産業分類に掲げる産業を行っているかがポイントになります。
特定技能外国人が働く事業所において、直近1年間で「製造品出荷額等」が発生している必要があります。
※製造品出荷額等とは、直近1年間における製造品出荷額、加工賃収入額、くず
廃物の出荷額及びその他収入額の合計であり、消費税及び酒税、たばこ税、揮発
油税及び地方揮発税を含んだ額のことを指します。
①製造品の出荷とは、その事業所が所有に属する原材料によって製造されたもの(原材料を他企業の国内事業所に支給して製造させたものを含む)を、直近1年間中にその事業所から出荷した場合をいいます。また次のものも製造品出荷に含みます。
ア 同一企業に属する他の事業所へ引き渡したもの
イ 自家使用されたもの(その事業所において最終製品として使用されたもの)
ウ 委託販売に出したもの(販売済みでないものを含み、直近1年間中に返品さ
れたものを除く)
②加工賃収入額とは、直近1年間中に他企業の所有に属する主原材料によって製造し、あるいは他企業の所有に属する製品又は半製品に加工、処理を加えた場合、これに対して受け取った又は受け取るべき加工賃をいいます。
③その他収入額とは、上記①、②及びくず廃物の出荷額以外(例えば、転売収入(仕入れて又は受け入れてそのまま販売したもの)、修理料収入額、冷蔵保管料及び自家発電の余剰電力の販売収入額等)の収入額をいいます。
自社が「素形材産業」分野であった場合、特定技能技能外国人がどのような業務を行えるのか、次の章で解説していきます。
「特定技能」外国人ができる業種、業務について
従事する業務内容について
①鋳造
②鍛造
③ダイガスト
④機械加工
⑤金属プレス加工
⑥鉄工
⑦工場板金
⑧めっき
⑨仕上げ
⑩機械検査
⑪機械保全
⑫電子機器組立て
⑬電気機器組立て
⑭プリント配線板製造
⑮プラスチック成形
⑯塗装
⑰溶接
⑱工業包装
以上の18業務区分になります。
これに対応する技能実習2号を修了すること、または対象区分の技能試験と日本語試験を合格すれば特定技能外国人として働くことが可能となります。
あわせて、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えないとされています。
関連業務の例として、
1. 原材料・部品の調達・搬送作業
2.各職種の前後工程作業
3.クレーン・フォークリフト等運転作業
4.清掃・保守管理作業
などが挙げられます。
就業の条件
直接雇用
産業機械製造業で「特定技能」外国人として働くためには
産業機械製造業で「特定技能」外国人として働くためには「特定技能(産業機械製造業)」を取得するための次のいずれかの条件を満たさなければなりません。
〇対象の業務区分の第2号技能実習を修了する
例:「溶接」の技能実習2号を修了した外国人が、「塗装」の業務で特定技能に移行することはできません。
または
〇①製造分野特定技能1号技能評価試験
技能試験は経済産業省が運営しています。
この試験は学科試験と実技試験があります。
全部で19試験区分あり、
(鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっ
き、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立
て、電気機器組立て、プリント配線板製造、プラスチック成形、塗装、溶接、工
業包装)
赤字で記してある18試験区分が産業機械製造業分野になります。
試験の詳しい日程についてはこちらから
②日本語能力試験(JLPT N4以上)もしくは 国際交流基金日本語基礎テスト
(JFT-Basic)
日本語能力試験(JLPT N4)の日本語能力水準はある程度日常会話ができ、生活
に支障がない程度の日本語能力を確認するとされています。試験方法はマーク
シート方式で年に2回(7月、12月)に各都道府県で開催されています。
国際古流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)もJLPTと同水準の日本語能力を確
認するための試験です。CBT方式の試験で開催スケジュール等は独立行政法人
国際交流基金のHPより確認できます。
詳しい内容はこちらから
①、②の試験に合格する必要があります。
「特定技能」外国人を雇用する条件
1⃣製造業特定技能協議会への加入
製造業特定技能協議会は製造業における制度の適切な運用を図るために設置された機関です。
各受け入れ企業は、出入国在留管理庁への在留諸申請前に必ず加入する必要があります。
2⃣制度で定められた支援の実施
特定技能外国人を受け入れるには法律で定められた支援を行う体制を構築するか、支援内容の一切を「登録支援機関」に委託する必要があります。
「特定技能」外国人を雇用する場合の費用
特定技能外国人の給与については同職種に従事する日本人と同等以上とされています。
加えて、在留資格申請費用や登録支援機関に支援を委託する場合には支援委託費用も発生します。
技能実習生受け入れ支援団体や士業事務所、人材会社など様々な機関が登録支援機関の登録行っており金額もバラバラな現状です。
特定技能外国人の雇用が初めてであれば様々な機関で話を聞くことおすすめします。
さいごに
「産業機械製造業」の「特定技能」外国人について理解できましたか。
転職について技能実習制度では困難でしたが、特定技能制度では本人の意思で自由に転職が可能となりました。
製造業では転職について注意点があるので記しておきます。
例えば、産業機械製造業分野で「鋳造」の仕事をしていた特定技能外国人が転職する場合、
〇①同じ産業機械製造業分野の「鋳造」の仕事であれば転職可能
(産業機械製造業→産業機械製造業)
〇②業務区分で認められている分野
(産業機械製造業→素形材産業)
✕③転職先の分野で業務区分が認められていない場合
(産業機械製造業→電気・電子情報関連産業)
※電気・電子情報関連産業では、「鋳造」の業務区分は認められていません。
また産業機械製造業分野で「鋳造」を行っている特定技能外国人が違う業務で仕事をしたい場合は、各技能試験を合格する必要があります。
外国人雇用では、日本人同様、早期退職をしないための工夫や努力が必要不可欠です。