在留資格「特定技能」は人手不足の特定の分野において、外国人材の就労を可能にした制度です。
「特定技能」外国人を雇用するためには、制度をきちんと理解した上で、自社が所属する業界特有の注意事項を抑える必要があります。
平成30年の食品衛生法改正により、令和2年6月までに全ての飲食料品製造業者にHACCPに沿った衛生管理の制度化への対応を求められることから、今後、飲食料品の製造現場においてHACCPを含む衛生管理の知識を有する人材の確保していく必要があります。
これまでの飲食料品製造業分野
飲食料品製造業の外国人労働者数
約13万人
在留資格別の構成比
飲食料品製造業では技能実習として働く外国人も全体の42%と多いことがわかります。
しかしながら技能実習生を受け入れできる職種は決まっており、飲食料品製造業だからといってどの企業でも受け入れができるというわけではありません。
次に働く時間に制限のある留学生のアルバイトや家族帯同の方が全体の20%を占めています。近年、「留学」という名で日本に来日し、出稼ぎ目的で働く外国人が増え社会問題になっています。
政府はそのような不法就労者を取締め、正規の手段である「特定技能」外国人の増加を促しています。
「特定技能」外国人が従事する業種、業務について
就業場所について
特定技能外国人が活動を行う事業所は、日本標準産業分類に掲げる産業のうち、主として、以下7分類のいずれかに掲げるものを行っている事業所になります。
飲食料品製造分野の対象範囲
◎食料品製造業(中分類09)
→〈食料品製造業の内訳〉
○畜産食料品製造業(小分類091)
○水産食料品製造業(小分類092)
○野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業(小分類093)
○調味料製造業(小分類094)
○糖類製造業(小分類095)
○精穀・製粉業(小分類096)
○パン・菓子製造業(小分類097)
○動植物油脂製造業(小分類098)
○その他の食料品製造業(小分類099)(でんぷん、めん類、豆腐・油揚げ、
あん類、冷凍調理食品、惣菜、すし・
弁当・調理パン、レトルト食品等)
◎清涼飲料製造業(小分類101)
◎茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)(小分類103)
◎製氷業(小分類104)
◎菓子小売業(製造小売)(細分類5861)
◎パン小売業(製造小売)(細分類5863)
◎豆腐・かまぼこ等加工食品小売業(細分類5897)
従事する業務内容について
特定技能外国人が従事する業務は、飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く。)製造・加工、安全衛生)です。
あわせて、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(原料の調達・受入れ、製品の納品、清掃、事業所の監理の作業等)に付随的に従事することは差し支えないとされています。
就業の条件
特定技能外国人の雇用は直接雇用とし、フルタイムで業務に従事する必要があります。
(この制度でいうフルタイムとは、労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であり、週労働時間が30時間以上であることになります。)
飲食料品製造業で「特定技能」外国人として働くためには
飲食料品製造業で「特定技能」外国人として働くためには「特定技能(飲食料品製造業)」を取得するための次のいずれかの条件を満たさなければなりません。
〇飲食料品製造業分野の第2号技能実習を修了する
食品製造関係の技能実習2号(3号)対象職種
▸1 缶詰巻締
▸2 食鳥処理加工業
▸3 加熱性水産加工食品製造業
▸4 非加熱性水産加工食品製造業
▸5 水産練り物製品製造
▸6 豚牛食肉処理加工業
▸7 ハム・ソーセージ・ベーコン製造
▸8 パン製造
▸9 そう菜製造業
10 農産物漬物製造
▸は、技能実習3号(5年)対象職種
または
〇①飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験
技能試験は一般社団法人外国人食品産業技能評価試験(OTAFF)が運営してい
ます。
試験の内容は、
食品安全・品質管理の基本的な知識(食中毒に関する知識等)
一般衛生管理の基礎(5S活動の取組の徹底等)
製造工程管理の基礎(製造工程の管理と注意事項等)
HACCPによる製造工程の衛生管理に関する知識(HACCPとは等)
労働安全衛生に関する知識(労働災害に関する知識等)
となっています。
②日本語能力試験(JLPT N4以上)もしくは 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
日本語能力試験(JLPT N4)の日本語能力水準はある程度日常会話ができ、生活
に支障がない程度の日本語能力を確認するとされています。試験方法はマークシ
ート方式で年に2回(7月、12月)に各都道府県で開催されています。
国際古流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)もJLPTと同水準の日本語能力を確
認するための試験です。
CBT方式の試験で開催スケジュール等は独立行政法人国際交流基金のHPより確
認できます。
詳しくはこちらから
①、②の試験に合格する必要があります。
「特定技能」外国人を雇用する条件
1⃣食品産業特定技能協議会への加入
食品産業特定技能協議会は飲食料品製造業及び外食業における制度の適切な運用を図るために設置された機関です。
各受け入れ企業は1人目の特定技能外国人の在留資格が許可された日から4ヵ月以内に協議会へ加入する必要があります。
2⃣制度で定められた支援の実施
特定技能外国人を受け入れるには法律で定められた支援を行う体制を構築するか、支援内容の一切を「登録支援機関」に委託する必要があります。
「特定技能」外国人を雇用する場合の費用
特定技能外国人の給与については同職種に従事する日本人と同等以上とされています。
加えて、在留資格申請費用や登録支援機関に支援を委託する場合には支援委託費用も発生します。
技能実習生受け入れ支援団体や士業事務所、人材会社など様々な機関が登録支援機関の登録行っており金額もバラバラな現状です。
特定技能外国人の雇用が初めてであれば様々な機関で話を聞くことおすすめします。
まとめ
「飲食料品製造業」の「特定技能」外国人について理解できましたでしょうか。
2019年に始まったばかりのこの制度ですが、現在全国で「特定技能」外国人の数は増え続けています。
外国人を初めて雇用しようと悩まれている企業は、外国人の支援体制の構築は非常に難しいと思います。何十人単位の採用を検討しているのであれば、自社で外国人支援の部署を立ち上げても良いのではないかと思いますが、少人数の採用を検討しているのであれば登録支援機関に委託した方が良いです。
注意すべき点は登録支援機関の認定自体は簡単にできてしまうところです。
「特定技能」外国人の採用を決め、登録支援機関を選ぶ際はしっかり情報を収集しましょう。