現在、介護業での外国人の受け入れは
①特定技能
②技能実習
③特定活動(EPA介護福祉士)
④在留資格「介護」
の4種類があります。
それぞれの在留期間や業務可能範囲などについて1つずつ解説していきます。
介護業では2025年問題がよく話題に上がります。
団塊世代が後期高齢者の年齢に達し、医療や介護の社会保障費の急増が懸念されています。2025年には後期高齢者の人口が2200万人に膨れ上がり、国民の4分の1が75歳以上になる見込みです。
社会保障費も問題ですが、介護現場の人手不足も深刻です。
どの在留資格で受け入れをしていけばいいかは事業所毎に違うので、相性の良い在留資格を持つ外国人を雇用していきましょう。
①特定技能
在留資格取得のための4つのルート
在留資格「特定技能(介護業)」は日本の人手不足を解消するために創設された在留資格になります。
特定技能外国人は4つのルートから在留資格を取得できます。
①介護技能・日本語能力試験
および
日本語能力試験(N4以上)または 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-
Basic)
に合格する。
②介護分野の技能実習2号を修了する
※試験免除
③EPA介護福祉士候補者としての在留期間(4年間)を満了する
※介護福祉士国家試験の結果通知書で
・合格基準点の5割以上の得点であること
・すべての試験科目で得点があること が必要になります。
④介護福祉士養成施設を修了した方
※試験免除
上記のいずれかを通り在留資格の認定が下りれば「特定技能」として働くことが可能です。在留期間は最大5年間で、企業は直接雇用で受け入れを行います。
業務内容
従事できる業務は、身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、同じ業務に従事する日本人が通常行うような、 支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)も可能、しかし訪問介護等の訪問系サービスにおける業務は対象としないとされています。
日本語や技能をある程度身に着けていて、業務内容も全般可能なので即戦力として活躍してくれるのが特定技能の良いところです。給与は日本人と同等以上とされています。
受け入れ人数
特定技能には受け入れ人数に制限があります。
特定技能外国人の人数が、日本人等の常勤介護職員の人数とされてます。
日本人等の常勤介護職員には
・介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士
・在留資格「介護」により在留する者
・永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する者
とし、
・技能実習生
・EPA介護福祉士候補者
・留学生
は含まれません。
業務委託費
また特定技能では受け入れに伴う支援を行う義務があります。
他分野の場合も、この支援を登録支援機関に委託するケースが多いです。人件費や在留資格の認定費用とは別に、この登録支援機関に毎月2万円~3.5万円の業務委託費が必要になります。
特定技能で働く外国人のほとんどの人は技能・日本語能力試験を合格するルートで働いています。
来年からは介護業の技能実習生が3年の実習終え、特定技能に移行する時期が来るのでそちらのルートからの特定技能外国人も増加していくでしょう。
②技能実習生
技能実習制度は国際貢献の一環として、開発途上国へ技術を移転する目的として創設された制度です。
技能実習生を受け入れるためためには、ほとんどの場合、監理団体を通じて受け入れる必要があります。監理団体は技能実習が適切に行えているか監理したり、受け入れ企業と技能実習生のサポートを行う機関です。
技能実習生の条件
実習生は「JLPT N4(日本語試験)」程度の日本が能力が必須で、2年目から「JLPT N3」が必要です。技能実習生の場合、採用後、在留資格の認定が下りるまでの約半年間、現地の日本語学校に通い、入国して2ヶ月間、法的講習を受講します。
さらに実務経験として
・外国における高齢者若しくは障害者の介護施設等において、高齢者又は障害者の
日常生活上の世話、機能訓練又は療養上の世話等に従事した経験を有する者
・外国における看護課程を修了した者又は看護師資格を有する者
・外国政府による介護士認定等を受けた者
のいずれかの経験を有すること
または
・技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること(母国の病院や介護
施設などで介護に関する訓練を受け、証明書を発行してもらうことで要件として
認められる)
が条件になります。
在留期間は1号(1年)、2号(2年)、3号(2年)の最長5年になります。
※3号は受け入れ企業と監理団体が一定の条件を満たす必要があります。
実習内容
身体介護(入浴、食事、排泄等の介助等)、身体介護以外の支援(掃除、洗濯、調理等)、間接業務(記録、申し送り等)および 周辺業務(お知らせなどの掲示物の管理等) になり、単純作業のみになるような技能実習は行えません。
また訪問介護等の訪問系サービスにおける実習は行えません。
受け入れ可能な人数
事業所単位で、介護等を主たる業務として行う常勤職員(介護常勤職員)の総数に応じて 設定(常勤介護職員の総数が上限)した数を超えることができない。
監理費
技能実習では監理団体と現地送出し機関への監理費が発生します。
国に関わらず1人あたり毎月3万円~5万円が相場平均です。
就労が目的ではない技能実習では雇用している間、どんな仕事をさせても良いわけではなく、きちんと技能実習計画に沿った実習を行う必要があります。
実習を目的にしているので賃金を特定技能のように日本人の同等以上にする必要はありませんが、技能実習生の借金などは社会問題にもなっているので、しっかりルールを守った技能実習を行いましょう。
③特定活動(EPA介護福祉士)
EPA介護福祉士はインドネシア、フィリピン、ベトナムの間で締結された経済連携協定のことをいいます。約10年前に始まったこの制度は「労働力の不足を補うものではなく、二国間の経済活動の連携の強化から生まれた特例措置です。
主な流れは養成施設や介護施設等で研修を行い(介護福祉士候補者)、介護福祉士国家試験の合格(EPA介護福祉士)を目指します。
介護福祉士の資格を取得できれば在留期間の上限なく日本での就労が可能となり、且つ、家族の帯同が認められます。
また受け入れ機関、送出し機関の双方が公的機関であるため、受け入れから国家試験までのスキームの透明性が高く、信頼性が高い仕組みになっています。
各国の特徴と条件
▸インドネシア
候補者の要件
以下のいずれかに該当する者
1.インドネシア国内にある看護 学校の修了証書Ⅲ以上取得者
2.インドネシア国内にある大学 の看護学部卒業者
3.インドネシア国内にある1・2以外の大学又は高等教育機関から修了証書Ⅲ
以上の学位を取得し、且つ、インドネシア政府により介護士として認定され
た者
訪日前日本語研修受講後にJLPT N4程度以上に達していること。
▸フィリピン
候補者の要件
以下のいずれかに該当する者
1.フィリピン国内にある看護 学校卒業者
2.フィリピン国内にある高等教育機関から学位号を取得し、且つ、フィリピン
政府により介護士として認定された者
訪日前日本語研修受講後にJLPT N4またはN5程度以上に達していること。
▸ベトナム
候補者の要件
ベトナム国内における3年制又は4年制の看護課程の修了者
訪日前日本語研修受講後にJLPT N3以上に合格していること。
3カ国の共通要件として、
「訪日後日本語研修及び介護導入研修を修了していること。」
「JICWELSの紹介による受入れ機関との雇用契約を締結していること。」
が必要になります。
※JLPT N2以上を取得していることが確認された者は、インドネシア人・フィリピ
ン人候補者については、 訪日前後の日本語研修を、ベトナム人候補者について
は、訪日前の日本語研修を受講しなくても要件を満たしているものとします。
在留期間
国家資格を取得する前は最長4年間(1年に1回の更新)
国家資格を取得後は更新の回数上限なし(1年又は3年に1回更新)
※また国家資格を取得できなかった場合、介護福祉士国家試験の結果通知書で
〇合格基準点の5割以上の得点であること
〇すべての試験科目で得点があること
上記の両方を満たせば特定技能に在留資格を変更することが可能です。
就労場所
介護保険3施設、認知症グループホーム、特定施設、 通所介護、通所リハ、認知症デイ、ショートステイ
※介護福祉士の資格取得後は、一定条件を満たした事業所の訪問系サービスも可能です。
EPA介護福祉士は経験・知識を豊富に兼ね備えている人材が多い印象です。給与は日本人と同等以上とされています。他の在留資格と比べ日本語勉強時間も長いです。
求人募集する際は、JICWELSに登録申請を行う必要があります。(JICWELS HPはこちら)
④在留資格「介護」
介護福祉士の資格を有する者が取得できる在留資格です。
今まで介護業の学校に通っている留学生が介護福祉士の資格を取得しても、日本で就労するための在留資格がありませんでした。
EPA国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)以外の留学生が介護福祉士の資格を取得すれば、在留資格の変更申請を行えるようになりました。
在留資格「介護」では在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」同様に、在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同も可能です。
主な流れは留学生として介護福祉士養成施設(専門学校)などで勉強し介護福祉士の資格を目指すことになります。
平成29年に在留資格「介護」が創設されてから、介護福祉士養成施設に入学する外国人留学生は2037人(令和元年)となっています(前年の約2倍)。またこの年の日本人を含む全入学者数の約30%は外国人です。
しかしながら国家試験に合格している留学生は約35%と低いものとなっています。
現状から公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会は、日本人と同等の試験合格率にするための対策や、合格できなかった留学生のための新たな在留資格の創設の呼びかけ等行っています。
さいごに
4つの在留資格についてわかりやすく表にまとめました。
EPA介護福祉士候補者や留学生は国家資格を目指していますが、その合格率は日本人で70%前後、外国人に関しては50%を下回ります。
介護福祉士の資格を持つ人材を企業同士で取り合っている中、従業員の定着率を向上させるのは難しい課題です。
筆者がおススメする介護業外国人の受け入れ方法は、「技能実習生から特定技能までの最長10年間の期間で介護福祉士を目指す」方法です。
技能実習生であればEPA経済連携協定を締結していない国からの受け入れも可能であり、在留資格「介護」の創設により日本で働きたい外国人はかなり増えています。
自社にあった人材とのマッチングがしやすいことに加え、10年間働きながら介護の経験・知識、日本語をしっかり勉強すれば介護福祉士の資格を取得できる可能性も大きく上がるでしょう。
日本で勉強する意欲のある外国人を採用し時間をかけ育成していくやり方が、将来的に自社で活躍する人材を生み出すことへと繋がると考えています。来たるべき2025年問題に備え、前もって戦略を練っておきましょう。